センター2017物理追試第3問A「臨界角と光の分散」

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■臨界角とは

物理が苦手な文子
屈折の問題ね。屈折の法則を使うと思うんだけど,どこから手を付けていいか分からないわ。

物理が得意な秀樹
キーワードとしては,まず「臨界角」かな。「臨界角」って何だろう?

物理が苦手な文子
確か「全反射」の話の時に出てきたと思うんだけど・・・

物理が得意な秀樹
「全反射」の手前っていうか,入射角が「臨界角」を超えると「全反射」になるんだよね。

物理が苦手な文子
なんとなく覚えているわ。

物理が得意な秀樹
「臨界角」がポイントなので,先に面BCでの屈折から考えてみようか。面BCに入る光の入射角を小さくしてみると,屈折して出ていく光はどう進むかな?

物理が苦手な文子
たぶん,図の下の方に屈折すると思うわ。

物理が得意な秀樹
そうだね。面BCの鉛直線と出ていく光の方向のなす角を屈折角というけど,入射角を小さくすると,屈折角も小さくなるんだよね。屈折する方向は感覚的にも分かると思うけど,屈折の法則を考えても,角度の大小は分かるね。

物理が苦手な文子
ということは,面BCにおける入射角をいくら小さくしても,屈折角が90°にはなりそうもないわね。

物理が得意な秀樹
そうだよね。だから,入射角を大きくしてみよう。

物理が苦手な文子
そうすると,屈折角も大きくなるのね。

物理が得意な秀樹
そして,屈折角が90°になるときの入射角を「臨界角」っていうんだ。

物理が苦手な文子
ということは,入射角が大きくなると「臨界角」になるのね。

物理が得意な秀樹
その通りなんだけど,あくまでも今考えていたのは面BCにおける入射角ね。

物理が苦手な文子
そうか。今,求めたいのは面ABにおける入射角なのね。

■面ABにおける屈折の図を描く

物理が得意な秀樹
なので,次は面ABにおける屈折の様子を描いてみようか。

物理が苦手な文子
入射角を大きくするときと,小さくするときを同時に描いてみるわ。

 

物理が得意な秀樹
そんな感じだね。そうすると,求めたいのはどっちかな?

物理が苦手な文子
求めたいのは面BCにおける入射角が大きくなる方だから,えっと,どっちかな?

物理が得意な秀樹
面BCに入射する場所が変わっちゃったから,分かりにくくなっちゃったかな?面BCに垂線を描いてみたら?

物理が苦手な文子
こういうこと?

 

物理が得意な秀樹
そうだね。

物理が苦手な文子
そうすると,右に来ている方が面BCへの入射角が大きくなっているわね。ということは,まとめるとこういうことね。

物理が得意な秀樹
そうだね。最初の空欄アには「小さく」が入るね。次の空欄はどうかな?

■屈折の法則の使い方

物理が苦手な文子
関係式を求めるから,屈折の法則を使うわね。

物理が得意な秀樹
そうだね。屈折の法則をまとめておくよ。次の図のように2つの媒質があって,入射角(屈折角),速さ,波長,屈折率の関係が次のようになるんだね。

物理が苦手な文子
屈折率だけ1と2の関係が逆になるのね。

物理が得意な秀樹
そうだね。そこがポイントだね。

物理が苦手な文子
面BCでの角度と屈折率の関係はこうね。

物理が得意な秀樹
あとはこの図から屈折の法則の式を立ててみよう。

物理が苦手な文子
こんな感じ?

    $$\frac{\sin{\theta_0}}{\sin90^\circ}=\frac{1}{n}$$

    $$\sin{\theta_0}=\frac{1}{n}$$

物理が得意な秀樹
正解だ。答えは⑦だね。それじゃあ問2に行ってみよう。

■「分散」と「回折」

物理が苦手な文子
選択肢を見ると最初の空欄は,「分散」か「回折」ね。

物理が得意な秀樹
「分散」も「回折」も図を描くと波が広がっていく感じにはなるけど,現象は全然違うよね。

物理が苦手な文子
「回折」って,「回折格子」の回折?

物理が得意な秀樹
そうだね。「回折」は,教科書などでは波の様々な分野で具体的な例が紹介されていて,防波堤による海の波の回折,塀などによる音の回折,山や建物による電波の回折,そして回折格子による光の回折などがあるね。

物理が苦手な文子
じゃあ「分散」は?

物理が得意な秀樹
「分散」は,たくさんの振動数(波長)の混ざった波が,媒質の振動数(波長)に対する屈折率の違いで分けられる現象なんだけど,普通は光の分散しか出てこないね。この問題のようなプリズムによる光の分散や,虹ができる仕組みのところで出てくるくらいかな。

物理が苦手な文子
ということは,この問いの答えは「分散」ということ?

物理が得意な秀樹
そう,空欄ウの答えは「分散」だ。詳しいことは問題文の続きを読むと分かるよ。

■屈折率は,波長によって変わる

物理が苦手な文子
「プリズムの屈折率は,波長の短い光に対するものほど大きく」って書いてあるけど,屈折率って大きくなったり小さくなったりするの?物質によって決まっている値じゃないの?そもそもこの問題の問1にも「屈折率nのプリズム」って書いてあるわよ。

物理が得意な秀樹
そうだね。屈折率は物質によって決まっている値だよ。例えば,こんな値だよ。

物理が苦手な文子
ガラスの「1.4〜1.9」ってどういうこと?

物理が得意な秀樹
ガラスって,いろんな種類があるので,屈折率も様々な値があるということなんだ。でもだいたい1.4〜1.9の間に収まるんだね。

物理が苦手な文子
じゃあやっぱり,値は決まっているじゃない。

物理が得意な秀樹
ただ,この値には前提条件があるんだ。

物理が苦手な文子
波長が決まっているということ?

物理が得意な秀樹
そうなんだ。ナトリウムランプって,トンネルのオレンジ色の光なんだけど,最近のトンネルはナトリウムランプを使わなくなっているので,だいぶん減っちゃったからあんまり見ないかな?

物理が苦手な文子
なんとなくわかるわ。オレンジ色のトンネル。その色の光の屈折率が,さっきの表っていうこと?

物理が得意な秀樹
そういうことなんだ。逆に言うと,違う波長の光だと,屈折率も変わるということだね。どう変わるかというと,この問題の文章のように,「屈折率は,波長の短い光に対するものほど大きく」なるんだ。

物理が苦手な文子
波長の短い光って,紫の方だっけ?

物理が得意な秀樹
そう,赤の方が波長が長くて,紫の方が波長が短いんだね。

 

物理が苦手な文子
ということは,紫の方が屈折率が大きくなるということよね。

物理が得意な秀樹
そうだね。そうすると,屈折の時にいっぱい曲がるのは,紫と赤のどっちだろう。

物理が苦手な文子
えっと,屈折の法則を考えると,nが大きくなると・・・どうなるかな?

物理が得意な秀樹
数学的に考えると,\thetaが増加すると90°までは\sin{\theta}の値も増加するんだよね。だからnが増加すると,\theta_2は減少するよね。

物理が苦手な文子
ん〜分からなくはないけど・・・

物理が得意な秀樹
基本に戻って考えると,屈折率って,屈折する割合だよね。だから,屈折率が大きい方が大きく屈折するということだよ。

物理が苦手な文子
分かりやすい!
ということは,波長の短い紫の方が屈折率が大きいんだから,紫の方がたくさん屈折するっていうことね。問題の図でたくさん屈折すると,Aの方に曲がるので,空欄エの答えは「A」ね。

物理が得意な秀樹
そうだね。最後の空欄オはどうかな?

■媒質中の光の速さ

物理が苦手な文子
選択肢を見ると,「速く」か「遅く」だから,波長が違うとプリズム中を進む速さが違うっていうこと?光の速さって一定なんじゃなかったっけ?

物理が得意な秀樹
光の速さって30万km/sなんだよね。3.0×108m/sね。この値も真空中を光が進むときっていう前提条件があるんだ。媒質中では遅くなるよ。

物理が苦手な文子
媒質中の速さは,どうやったら分かるの?

物理が得意な秀樹
屈折の法則から分かるんだ。屈折の法則は「屈折」していなくても成り立つので,速さと屈折率の関係のところだけ抜き出してみるよ。

物理が苦手な文子
屈折の法則って,屈折していなくても成り立つの?

物理が得意な秀樹
そうなんだよね。この式で,媒質中の光の速さはv_2なので,式を変形してみよう。

物理が苦手な文子
v_2を求めてみればいいのね。

    $$v_2=\frac{v_1}{n}$$

ということは,分母に屈折率が来るから,屈折率が大きい方が遅くなるっていうことね。

物理が得意な秀樹
その通り!

物理が苦手な文子
問題文の主語は「短い光の方が」となっているので,紫の方が屈折率が大きいので,短い光の方が「遅く」なるということね。

物理が得意な秀樹
正解だ。空欄には「分散」,「A」,「遅く」の順に入るので,答えは②だね。

 

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