センター2018物理第3問A「波の式・定常波・弦の振動」



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■波の式に頼らずに考えてみる

物理が苦手な文子
三角関数が書いてあるだけで,やる気が無くなるわ。

物理が得意な秀樹
たしかにちょっとイヤだね。

物理が苦手な文子
sinの中にあるT\alphaを求めると言われても,何をすればいいか分からない。

物理が得意な秀樹
このTは,周期を表すTだから,周期を求めればいいんだよ。

物理が苦手な文子
波の分野に出てくるTが周期を表すのは知ってるけど,式の中のTが周期を表しているのは気が付かないわ。

物理が得意な秀樹
なるほど。波の式を覚えていれば,分かるんだけどね。こんな式だよ。

    \begin{eqnarray*}y&=&A\sin\frac{2\pi}{T}\left(t-\frac{x}{v}\right)\\y&=&A\sin2\pi\left(\frac{t}{T}-\frac{x}{\lambda}\right)\end{eqnarray*}

物理が苦手な文子
見たことはあるけど・・・,この式から\alphaも分かるの?

物理が得意な秀樹
実は分からないんだよ。問題の波の式はx=0mでの媒質の変位を表しているので,x=0を波の式に代入してみるよ。この場合はどっちの式に代入しても同じだね。

    $$y=A\sin2\pi\frac{t}{T}$$

こんな風になっちゃうんだよ。

物理が苦手な文子
それじゃあ,\alpha=0でしょ。

物理が得意な秀樹
それが違うんだよ。この問題では与えられた式を変形するというよりは,問題の下にあるグラフから条件を読み取るんだ。

物理が苦手な文子
そうか,グラフが2つもあるわね。どうすればいいの?

物理が得意な秀樹
2つのグラフからいろんな情報を読み取ることができるんだけど,問題の波の式はx=0mでの媒質の変位だったから,x=0mの情報を読み取ろう。

物理が苦手な文子
なるほどね。t=0sのグラフを見ると,x=0mでy=0.1mね。

物理が得意な秀樹
そうだね。t=0.1sのグラフは?

物理が苦手な文子
t=0.1sのグラフは,x=0mでy=0mね。

物理が得意な秀樹
そう,それじゃあt=0sの情報を問題の式に代入してみよう。

物理が苦手な文子
t=0でy=0.1なので,y=0.1\sin\left(2\pi\displaystyle\frac{t}{T}+\alpha\right)に代入すると,

    $$0.1=0.1\sin\left(0+\alpha\right)$$

    $$\sin\alpha =1$$

ということは,\alpha = \displaystyle \frac{\pi}{2}でいいの?

物理が得意な秀樹
三角関数は2\piごとに同じ値を取るから,実際には\alpha = \displaystyle \frac{\pi}{2}だけではないんだけど,選択肢を見ると該当するのは\alpha = \displaystyle \frac{\pi}{2}しかないんだよね。

物理が苦手な文子
なるほどね。これで\alphaは分かったけど,Tはどうすればいいの?

物理が得意な秀樹
やっぱり次は,t=0.1sの情報を問題の式に代入してみようよ。

物理が苦手な文子
そう言えばそうだったわね。t=0.1でy=0と,\alpha = \displaystyle \frac{\pi}{2}を,y=0.1\sin\left(2\pi\displaystyle\frac{t}{T}+\alpha\right)に代入すると,

    $$0=0.1\sin\left(2\pi \frac{0.1}{T}+\frac{\pi}{2}\right)$$

    $$\sin\left(2\pi \frac{0.1}{T}+\frac{\pi}{2}\right)=0$$

物理が苦手な文子
\sin\thetaが0になるのは,\theta = 0,\pi,2\pi,\cdotsといろいろあるわよね。どうすればいい?

物理が得意な秀樹
順番に計算していけば,いつか答えが出ると思うけど,今は選択肢を見るとT=0.2T=0.4しかないから,両方代入してみれば成り立つ方が分かるんじゃない?

物理が苦手な文子
あっ,そうね。それじゃあまず,T=0.2を代入してみると,

    \begin{eqnarray*}\sin\left(2\pi \frac{0.1}{0.2}+\frac{\pi}{2}\right)&=&\sin\left(\pi+\frac{\pi}{2}\right)\\&=&\sin\left(\frac{3\pi}{2}\right)\\&=&-1\end{eqnarray*}

物理が得意な秀樹
0にならなかったから,T=0.2は違うみたいだね。

物理が苦手な文子
じゃあT=0.4が答えね。

物理が得意な秀樹
きっとそうだけど,一応代入してみようよ。

物理が苦手な文子
まぁそうね。

    \begin{eqnarray*}\sin\left(2\pi \frac{0.1}{0.4}+\frac{\pi}{2}\right)&=&\sin\left(\frac{\pi}{2}+\frac{\pi}{2}\right)\\&=&\sin\pi\\&=&0\end{eqnarray*}

物理が得意な秀樹
やっぱり0になったね。まとめると,\alpha = \displaystyle \frac{\pi}{2}T=0.4なので,答えは⑥だ。それでは問2にいってみよう。

■合成波を描いてみる

物理が苦手な文子
この問題では,x=1.0mで反射したって書いてあるけど,図にはx=1.0mは無いわね。

物理が得意な秀樹
そこまで図はなくても,問題は解けるっていうことかな。まぁ必要だったら波形を伸ばせばいいよね。

物理が苦手な文子
そうね。問題を読むと図の入射波と反射波から合成波を描けば良さそうだけど,それでいい?

物理が得意な秀樹
そうだね。まずはこの入射波と反射波の波形をもとに合成波を描いてみよう。

物理が苦手な文子
最初は点をとってみるわ。入射波と反射波の変位の和をとった点ね。

物理が得意な秀樹
いいんじゃないかな。

物理が苦手な文子
点を結べば,合成波ね。

物理が得意な秀樹
そうだね。この合成波が定常波になるんだね。

■腹の位置と節の位置を確認する

物理が苦手な文子
定常波の腹や節を見つけるのって,定常波を動かしてみないと分からないんだっけ?

物理が得意な秀樹
そんなことないよ。今描いた合成波を見れば節の位置はすぐに分かるよ。

物理が苦手な文子
ということは,x軸と交わっているところ?

物理が得意な秀樹
そうだよ。節は動かないから節なんだよね。だから,この瞬間に変位y=0だったら,時間が経ってもy=0なんだよ。

物理が苦手な文子
なるほど。じゃあ,節はここ?

物理が得意な秀樹
いいね。ただ,今は−0.2m≦x≦0.2mなので,この範囲に入る節の位置は−0.1mと0.1mだね。

物理が苦手な文子
節の位置が分かったら,あとはx=1.0mが,固定端反射なのか,自由端反射なのかね。やっぱりx=1.0mまで波形を伸ばしたほうがいいの?

物理が得意な秀樹
伸ばしてもいいけど,伸ばす必要はないんだ。固定端反射,自由端反射と定常波の腹,節の関係は覚えてる?

物理が苦手な文子
固定端反射のところでは動かなんだから,節よね。

物理が得意な秀樹
そうだね。

物理が苦手な文子
それじゃあ,x=1.0mのところが腹なのか,節なのかが分かればいいのね。

物理が得意な秀樹
もう節の場所は分かっているし,節と節の間に腹が来るからx=1.0mの位置が腹なのか節なのかは分かりそうだよね。

物理が苦手な文子
こういうことね。

物理が苦手な文子
このままいくと,x=1.0mの位置は腹になりそうね。

物理が得意な秀樹
そういうことになるね。

物理が苦手な文子
つまり,x=1.0mが腹ということは,自由端反射をしているのね。

物理が得意な秀樹
その通り!答えは②だ。


■基本振動と2倍振動の合成波を考える

物理が苦手な文子
今度は弦の振動の問題ね。基本振動と2倍振動は分かるけど,合成波ってどういうこと?

物理が得意な秀樹
そうだね。普通「合成波」と言ったら,今やった問2のように,逆向きに進む2つの進行波がぶつかったときに,重ね合わせて考えるんだね。例えば,この問題の基本振動や2倍振動も,右向きの波と,左向きの波が合成されてできているんだね。

物理が苦手な文子
弦の振動は合成波っていうことね。

物理が得意な秀樹
弦の振動も気柱に生じる固有振動も,定常波ができていて,定常波は合成波なんだ。

物理が苦手な文子
なるほどね。

物理が得意な秀樹
この問題では,基本振動と2倍振動を合成した「合成波」を考えているんだ。

物理が苦手な文子
じゃあ,合成波の合成波っていうこと?

物理が得意な秀樹
そういうことになるね。ややこしそうだけど,考え方は簡単だよ。基本振動の波形と2倍振動の波形を合成するのは,問2でやった定常波を求める方法と同じだ。

物理が苦手な文子
そもそも,問題の図には合成波が描かれているけど,これは基本振動と2倍振動の波形を合成したっていうこと?

物理が得意な秀樹
そうだよ,確認してみようか。1つの図にまとめちゃった方が分かりやすいよね。

物理が苦手な文子
確かに合成波の波形は,基本振動と2倍振動の波形を合成した波形になっているわね。この問題で求めたいのは,t=\frac{5T}{8}のときだから,この次の時刻の波形ね。

■t=0sの基本振動の波形は,変位が最大のときなのか?

物理が得意な秀樹
まずは基本振動からだね。

物理が苦手な文子
t=\frac{4T}{8}で弦の中央の変位が最大になっているから,t=\frac{5T}{8}では上に戻って(a)の波形になると思うんだけどどう?

物理が得意な秀樹
答えは合ってるんだけど,どうして(b)じゃないの?

物理が苦手な文子
だって,t=\frac{4T}{8}で変位が最大でしょ。

物理が得意な秀樹
どうして変位が最大だって分かるの?

物理が苦手な文子
え~だって,変位が最大っぽいでしょ。

物理が得意な秀樹
実は問題文に大切なことが書かれていて,「基本振動の周期はT」とあるでしょ。つまり,\frac{T}{4}ごとに「変位最大」と「変位0」を繰り返すんだ。だから,t=\frac{4T}{8}で変位が最大になっているので,次の瞬間上に戻るんだね。

物理が苦手な文子
そういう風に考えるのね。

物理が得意な秀樹
というわけで,t=\frac{5T}{8}での基本振動の波形は少し戻った波形,(a)だ。それでは2倍振動はどうかな。

物理が苦手な文子
弦全体の変位が0になっている時刻が3つもあるわね。周期がTだとすると,おかしくない?

物理が得意な秀樹
おかしくないんだな。問題文にあるのは,「基本振動の周期はT」だよ。

物理が苦手な文子
2倍振動だと周期は変わるんだっけ?

物理が得意な秀樹
変わらないのが弦を伝わる波の速さvで,波長と周期,振動数は変わるね。2倍振動の波長は基本振動の波長の半分だから,v=f\lambdaより,振動数は2倍になって,T=\frac{1}{f}だから,周期は半分になるね。

物理が苦手な文子
2倍振動では周期が半分だから,問題の図のt=0からt=\frac{4T}{8}までで,1周期ということね。

物理が得意な秀樹
その通りだ。

物理が苦手な文子
ということは,t=\frac{4T}{8}までで1周期が終わっているから,t=\frac{5T}{8}は戻って次の時刻だからt=\frac{T}{8}と同じ波形の(c)が答えね。

物理が得意な秀樹
その通り。では基本振動である(a)の波形と2倍振動の(c)の波形を合成してみようか。

物理が苦手な文子
こんな感じ?

物理が得意な秀樹
正解だ。選択肢から選ぶと合成波は(e)の波形になるので,「(a),(c),(e)」という答えは①だ。

 

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