科学者と一般市民の科学認識に大きなギャップ
このデータは、もともとはナショナルジオグラフィック日本版の記事に掲載されていたものです。「科学者と一般市民の科学認識に大きな溝」というタイトルです。詳しくはそのサイトを見て下さい。
しかしこの記事で気になったのは、文章中には「原子力の安全性」とか「動物実験」という言葉が出てくるのに、データは無いのです。アメリカの科学者が「原子力の安全性」について、どう思っているのか気になったので、元の情報を探してみたところ、何とか見つけたので紹介します。
「Pew Research Center – Internet, Science & Tech」というサイトに掲載されていて、「Public and Scientists’ Views on Science and Society」というタイトルでした。日本の記事はこの一部だけを紹介している形になっています。全文を訳すのは私には無理なので、必要なグラフの所だけ新しく作ってみました。
一番差が大きかったのは、遺伝子組み換え食品の安全性
「遺伝子組み換え食品」について、科学者は88%が安全だと考えているんですね。「農薬」よりも、遺伝子組み換えの方が良いということですね。日本での遺伝子組み換えに関する印象と、米国の一般市民は同じイメージではないでしょうか。でも科学者は安全だと考えているようです。
「動物実験」について、反対派の市民活動をよく見ますが、科学者としては仕方が無いということでしょうか。一般市民も47%は賛成してるんですね。
「人類は進化によって生まれた」というのは、日本では当たり前のように考えますが、米国の一般市民の数字が小さいのは、宗教の関係ですね。カトリック教会では1950年からいろいろとあったようですが、ローマ法王が正式に進化論を認めたのは、1996年です。その後もいろいろあって、現ローマ皇帝が進化論を肯定したときも、ニュースになったようです。
「神は生物を進化するよう造った」 現ローマ法王も肯定 2014年10月30日 朝日新聞DIGITAL
「原子力発電所の建設」については、米国の科学者は65%が賛成
日本の科学者ではどうでしょうね。米国の一般市民が「原子力発電所の建設」にそれほど賛成していないんですね。なんとなくですが、もっと高いと思っていました。
「気候変動」については、科学者は人間活動が原因だと考えています。一般市民は半数の50%ですね。これも日本だとどんな数値になるのでしょう?
逆に人口増加については、もっと危機感があっても良い感じがします。隣に中国がある日本とは危機意識が違うのでしょうか。
宇宙開発については、経済状況により値が変わるような気がします。景気が良ければ賛成だし、景気が悪ければ反対、という人がかなりいるでしょう。日本では「はやぶさ」が奇跡的に戻ってきたストーリーが感動を呼び、宇宙開発に関して大きな反対は聞きませんが、景気が悪くなるとどうなるか分からないと思います。民主党政権時のスーパーコンピュータの予算削減の話題が記憶に残っていますが、宇宙開発のように成果が分かりにくいものは最初に予算削減の対称になるでしょう。
一般市民も科学的な素養を!
最初に紹介したこの記事の日本語版には「このような状況を変えるため、科学者の側が何らかの行動を起こす必要があります」と書かれています。私も同感です。私自身は科学者というよりも教育者側ですが、少しでも科学を身近に感じてもらえるような活動をしたいと思います。