■空気中の音の速さは温度で決まる
音波に関する記述の中から正しいものを選べばいいのね。
音波に限らず一般的な波に関する式で,こんなのがあるね。
ということは,波長が一定であれば,音の速さと振動数は比例するっていうことね。つまり答えは①ね。
ちょっと待ってよ。確かに波長が一定であればそう言えるけど,波長は一定なの?
通常は音波の波長は一定じゃないんだよ。気柱共鳴などの図を描くとき,振動数が変わったら波長も変えて描いたんじゃない?
そうか,そう言われれば基本振動,2倍振動など波長を変えて描いたわね。それじゃあ,波長が一定じゃなければ,速さと振動数は比例しないっていうこと?
そうだね。大切なのは「空気中を伝わる音の速さは気温で決まる」ということなんだ。
そう,上の式からもわかるように,温度だけで決まるんだ。例えば,温度が20℃だったら音の速さは331.5+0.6×20=343.5m/sということになるんだ。
それじゃあ,温度が変わらないから音の速さは一定だと考えていいの?
温度が変わらないとは書いていないけど,少なくとも振動数が変わった結果,音の速さも変わるっていうことはないね。
■1オクターブ高い音は,振動数が2倍
①は違うということね。次は②ね。音が1オクターブ高くなるって,ドの音が高いドの音になるっていうこと?
そういうことだろうね。ただ,1オクターブであることは今はあまり問題ではなくて,音が高くなるっていうことが重要なんだ。つまり,音が高くなると波長は長くなる?短くなる?
「音が高くなる」って,「振動数が大きくなる」っていうことよね。
さっきの
を考えると,音の速さは変わらないとすれば,振動数と波長は反比例の関係ね。音が高いと波長は短くなるということね。
そうなんだよ。②も違うっていうことだね。ちなみに,音が1オクターブ高くなると振動数が2倍になるんだ。波長は2分の1になるんだよ。
■「回折」は障害物の背後に回り込む現象
そうなのね。③の文章は「回折」がキーワードね。文字から判断すると回折は「まわっておれる」っていうことだから,文中の「まわりこむ」っていう表現は合ってそうな感じがするけど。
「回折」っていうのは,波が障害物の陰にまわりこむ現象をいうんだ。海の波が防波堤の隙間から回り込んだり,電波が建物の陰に回り込んだり,音が塀の裏側に回り込んだり結構いろいろなところで見られる現象だね。
例えば,防波堤に波が左からぶつかった図を描いてみるよ。
ぶつかった波が防波堤の隙間を抜けると,広がっていくのね。
広がってはいるんだけど,進行方向を描いてみると,防波堤を抜けて折れ曲がっているでしょ。なので「回折」っていうんだ。
なるほどね。そういえば,光の分野で「回折格子」って出てきたけど,それも回折なの?
そうだよ。回折格子には光にとっての障害物であるガラス面のキズがあって,キズとキズの間から光が回折して広がっていくんだ。
へーそうなんだ。じゃあ,③の文章は正しいっていうこと?
そう,答えは③ということだ。一応④,⑤の文章も見ておこうか。
■うなりの回数は振動数の差
そうだね。1秒間に生じるうなりの回数は,振動数の差で求められるんだよね。
④の文章でいうと,「振幅」が異なるんじゃなくて,「振動数」が少し異なる二つの波で唸りが生じるっていうことね。
■音源が近づくとき,振動数が大きくなる
音源が動いて観測者が聞く音の振動数の話をしているから,ドップラー効果についてだね。
もちろん,ドップラー効果の公式から考えてもいいんだけど,日常の経験から考えても分かるんじゃないかな。救急車がサイレンを鳴らしながら近づいてくるとき,音は高くなっている?低くなっている?
そうだよね。近づいてくる音源の速さが,速ければ速いほど音は高くなるんだけど,振動数で考えると大きくなるっていうことだよね。
そうね。⑤の文章は最後が「大きくなる」って書いてあれば正しい文章ね。