■ファラデーの電磁誘導の法則
グラフを選ぶ問題ね。電池も何もないけど,コイルに電流は流れるの?
あー電磁誘導か。ファラデーの電磁誘導の法則っていうやつ?
まぁ確かに最初からマイナスがついていたり,あまり見かけない
という文字が入っていたり,いやな感じではあるよね。一応この式を使っても答えは出せるんだけど,この式から導き出される次の式の方が使いやすいんだ。
棒に生じる起電力が関係しているときには,この式が便利なんだ。今は,コイルの辺abが磁場(磁界)に入るまでは,起電力は生じないからコイルに流れる電流は0ね。
確かにどのグラフも原点より左側は0になってるわね。
原点より右側は,①から④のように急に電流が流れるか,⑤から⑧のように徐々に電流が大きくなるのかは,分かるかな?
そこは大切だね。次の問4では,その一定の速さ
を求めることになっているよ。
速さを
とすると,さっきの式
が使えるのね。
磁場に垂直な辺だけを考えるんだよ。磁場の向きに磁力線があるんだけど,その磁力線を横切っている部分だけを考えるんだ。だから,横の辺は考えなくていいんだね。
なるほど。ということは,辺abだけを考えればよくて,発生する起電力
は,
となるわね。
そうだね。そうすると,コイル全体の抵抗が
だから,流れる電流
はどうなるかな?
オームの法則でいいわよね。
そうだね。ということは,電流は時間によらず一定値ということだよね。つまり,⑤から⑧のグラフではないということだ。
次は,流れる電流の向きが正か負かね。電流の向きはどうやって求めるの?
さっきのファラデーの電磁誘導の法則の,「コイルの磁束の変化をさまたげる向きに起電力が生じる」ということから求めてもいいし,コイルの中の自由電子が受けるローレンツ力の向きから求めることができるよ。
磁場中で荷電粒子が運動している時に受ける力のことだけど,これはまぁ別の所で話をすることにして,もう一つ電流の向きを求める方法があるんだ。
■フレミング”右手”の法則
そう右手。左手の法則と同じように,右手の中指,人差し指,親指がそれぞれ直角になるようにするんだ。
そうすると,誘導起電力,磁場,運動の向きを示してるんだ。
一般的には,中指から順に「電磁動」と覚えるといいよ。
それじゃあ,フレミング右手の法則を使ってみると,人差し指が磁場の向きだから,紙面に垂直で裏から表の向きね。親指は運動の向きだから下向きよね。
誘導起電力の向きが左ということは,回路に書き込むとこんな感じになるということだよ。
a側が正極の電池ということね。ということは,電流はadcbaの向きに流れると考えていいわよね。
abcdaの向きが正だから,電流は負だね。これで,②か④に絞られたね。
あとは,時刻
で電流が0になるのか,そのまま電流が流れ続けるのか,という2択ね。
時刻
はコイルがすべて磁場に入った時だよね。
コイルが全部磁場に入っても,辺abに生じる誘導起電力はそのままよね。磁場中を導体棒が運動すれば誘導起電力が発生するんだから。
確かにその通りだ。その通りなんだけど,コイルが全部磁場に入ると,今度は辺dcにも誘導起電力が生じるんだ。
そうか。辺dcも磁場の中で下向きに動いているから,辺abと同じように誘導起電力が生じるのね。
そうだね。辺abにも辺dcにも左向きの誘導起電力が生じるから,打ち消し合って結局電流は流れないんだ。
どちらの誘導起電力も,大きさが
だから,逆向きで打ち消し合うということね。
そういうことだね。別の考え方として,コイルがすべて磁場に入ると「コイルを貫く磁束が変化しないので誘導起電力は生じない」,としてもいいね。
■「等速」なら「力のつり合い」を考える
「一定の速さ
」を求める問題ね。等速だから,速さ=距離÷時間よね。つまり,
から
の間に
だけ落下するから,こうね。
その通りだよ。そうなんだけど,選択肢の中にその答えがないよね。
ということは,
か
を他の文字で表せばいいわよね。
他の方法を考えるしか無いんだよ。これがセンター試験などのマーク形式の問題のイヤなところだね。選択肢がある問題は選べばいいだけだから簡単な感じもするけど,自分の出した答えが合っているのに選択肢に無い,ということもあるんだよ。
そういう時は,別の方法を考えるしか無いのね。等速だから,速さ=距離÷時間を使うと思ったけど,使わないとすればどうすればいいの?
「一定の速さ」というキーワードで思い出して欲しいのは,「力のつり合い」なんだ。
そうか,力がつり合っていれば等速直線運動をするんだから,逆に等速直線運動をしていれば,力がつり合っていると考えていいのね。
必要なのは,コイルが途中まで磁場に入っているときの図ね。それじゃあ,まずは重力ね。
あとは,くっついているものがないので,これで終わり?
そうよね。鉛直上向きの力がはたらいているはずよね。
鉛直上向きにはたらいているのは,電流が磁場から受ける力だね。
あっそうか,「フレミング左手の法則」で求める力ね。
そうだよ。ただフレミング左手の法則では,力の向きしか分からないけどね。
そうか,力の向きは,鉛直上向きって決まっているのよね。
その通り。力の向きはすでに分かっているんだ。でも一応確認しておこうか。電流の向きはこうだったね。
ということは,フレミング左手の法則より,電流が磁場から受ける力はこうね。
確かにコイルの辺abが受ける力は鉛直上向きだけど,左右の辺も力を受けるよ。
あっそうか忘れてた!左右の辺にも力がはたらくのね。こんな感じ?
そうだね。この左右方向の力は逆向きで同じ大きさの力だから,つり合っていて今は考えなくていいね。
長さ
の導線を流れる電流
が磁束密度Bの磁場から受ける力の大きさ
は,こう表せるんだ。
フレミング左手の法則からもわかるけど,この式の
,
,
はそれぞれ垂直の関係だからね。垂直じゃない場合は,垂直な成分を考えることになるよ。
フレミング左手の法則を考えるときの指も,それぞれ垂直な方を指すものね。
そういうことだね。コイルにはたらく左右方向の力を見てみると,左右の辺で,
,
,
がすべて同じだから,はたらく力の大きさ
も同じなので,力がつり合っているんだね。
それじゃあ,あらためてコイルにはたらく力を考えてみると,辺abの長さが
だからこんな感じね。
そして,コイルが一定の速さで落下しているから,鉛直方向の力もつり合っているんだよね。
求めたいのはその一定の速さ
だけど,鉛直方向の力のつり合いの式を立てても
は出てきそうもないわ。一応鉛直上向きを正として,力のつり合いの式を立てるとこうね。
そうだね。そもそも図の中に
という文字がないもんね。実は,図の中の文字でいうと,電流
は与えられていないんだよね。
それじゃあ,まず電流を求めなきゃダメね。どうすればいい?
そういえば,そうだったわね。こうね。
そうだったよね。さっきのつり合いの式と合わせて,
を求めよう。
あとは簡単ね。つり合いの式に今の
を代入するわね。